車を楓の木の下に駐め、渓流に架けられた小さな橋を渡ると、ささやかではあったが、いく張りかのテントが張られ、地元の農産物が直売され、伊那谷名物の
「五平餅」 の屋台が店を開いていた。 横の高台に登って振り返ると、中天の太陽に照らされて深紅に発色するもみじの灌木が渓流に沿って山裾を染め、来るべき1年のうちの
「この1日」 を高らかに謳歌していた。 そのとき、かかる自然を育み、こよなく愛でる箕輪町のもろびとが集うこの里に、麗しき香りに包まれた桃源郷の
「邑の風景」 を私は確かに眼下にかいま見たのである。
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