近くの八ヶ岳高原ロッジの従業員に場所を教えてもらい、ようやくこのホテルの前に立つことができたが、それでもまだピンとこない。
だがしばらくたたずんでいて、あることに気がついた。 つまり、34年間に渡ってホテルは 「変わらずに」 ここにたたずんでいたのであろうが、ホテルを取り巻く環境は
「変わってしまっている」 という 「あたりまえのこと」 に思いが至ったのである。 ホテルの周りは、今や樹木が高く生い茂り、「自然郷」
と銘打たれた別荘地には、いくつもの建物が造られ、かって私が見たホテルの姿を覆い隠してしまっていたのである。 それらの覆いを一枚一枚はいでいくうち、忽然として、あの雄大な八ヶ岳山麓をバックに
「ぽつんと」 たたずんでいた瀟洒なホテルが霧の中から眼前に甦ってきた。 やはり私は34年前に 「このホテル」 の前に立ったのである。
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