康燿堂美術館の開館は2001年7月にさかのぼる。 当初は佐鳥電機株式会社、前会長佐鳥康郎氏の個人美術館であったが、佐鳥康郎氏の急逝にともない2005年8月からは京都造形芸術大学が運営を引き継ぎ現在に至っている。
この美術館には開館当時から幾度か訪れている。 「作品を見るため」 は勿論ではあるが、何といっても美術館の中を流れる空気の静謐と清澄がいいのである。
八ヶ岳山麓に位する6000坪の森の中にたたずむ建築デザインは贅に驕らず、かといって没個性的でもなく、瀟洒にして周囲の環境に溶け込んでいる。
西に尖石縄文遺跡と2体の国宝土偶 「縄文のビーナス」、「仮面の女神」 を展示する尖石縄文考古館、東に三井の森に付随する竜神池が神秘の気配を湛えて横たわっている。
私は常々、美術館は所蔵する作品よりも、とりまく空間こそがすべてと考えてきた。 その観点からしても 「秀逸」 と形容したい美術館のひとつである。
|