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八島湿原(4)
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八島湿原 / 長野県諏訪郡下諏訪町
昭和の面影
 春まだ浅い八島湿原である。 東日本大震災の影響であろうか、5月の連休中といえど観光客の姿はめっきりと少ない。 例年であれば、入る車が列をなす駐車場も、今日は場内もガラガラ、整理員も手持ちぶさたである。
 昨年秋には湿原を周回する遊歩道を一周した。 今回はそれとは逆回りで半周し、もとのところに引き返した。 その半周行ったところに、米山正夫、詞曲の 「山小舎の灯」 の石碑が、背高い草もうの中に、寂しくぽつんと立っていた。 昭和22年、近江俊郎が歌ってヒットした青春歌謡が、何ゆえに、この地に石碑となっているのかわからないが、碑に刻まれた歌詞を読んでいるうち、かってあったであろう 「昭和の面影」 が彷彿と甦ってきた。
 山小舎の灯/米山正夫 詞曲
黄昏の灯は ほのかに點(とも)りて
懐かしき山小舎は ふもとの小径よ
思い出の窓に凭(よ)り 君を偲べば
風は過ぎし日の 歌をばささやくよ

暮れゆくは白馬か 穂高は(あかね)茜よ
樺の木のほの白き 影も薄れゆく
寂しさに君呼べど わが声むなしく
はるか谷間より こだまは帰り来る

山小舎の灯は 今宵も點りて
独り聞くせせらぎも 静かに更けゆく
憧れは若き日の 夢をのせて
夕べ星のごと み空に群れ飛ぶよ
2011.05
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