土地の人はただ単に 「千鹿頭」 と呼ぶ。 小高い山上には千鹿頭神社が置かれ、麓には千鹿頭池がひかえている。
神社は諏訪大社と同じく神木を建てる御柱大祭が行なわれる。 山上からは松本平を一望のもとに眺めることができる。 高校時代、陸上競技部に所属していた私はここに来て、山上に駆け上がりては、かつまた駆け下り、池の周囲を夕闇迫るまで数えることも忘れるぐらい駆け回っていた。
それは遥か幾星霜も前のことである。 当時は池に何艘ものボートが浮かび、賑わいをみせていたのだが、今はその面影はない。 ただ閑寂としたたたずまいの湖畔が
「夢のあと」 を伝えているだけである。
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