今からおよそ2000万年前から500万年前の新生代第三紀中新世という時代、このあたり一帯はフォッサ・マグナと呼ばれる海域で、海底には、溶岩や小石・砂・泥などが積もって厚い地層をつくりました。鴻の巣の岩石は、そのうちの約1300万年前から950万年前にかけて堆積した礫岩と砂岩で
「青木層」 と呼ばれる地層の一部分です。
鴻の巣の地層は、地殻変動によって長い年月をかけて海底から隆起するときに圧し曲げられ、北側に四十度から六十度ほど傾斜しています。
崖に見られる茶色の横縞模様は、隆起後に地層の境目に浸みこんだ鉄分の色です。 砂岩層には、木の葉の化石も見られます。
礫はおもにチャートという岩石です。 他に黒色の粘板岩や硬砂岩、白っぽい流紋岩、それに緑色凝灰岩などがあります。 純粋なチャートは白色ですが、不純物が混ざった灰色・緑色・褐色など様々な色のものがあります。
チャートや粘板岩は、上田小県地方にはない岩石ですので、佐久山地や赤石山脈方面から運ばれたものと考えられます。 また、緑色凝灰岩は、太郎山や独鈷山地域の岩石で、それが礫として入っていることから、当時これらの山の一部は陸地になっていたことがわかります。
鴻の巣の崖は、幅が東西およそ190m、高さが最高約60mで、堆積岩の崖としては上田市では最大です。 崖のすぐ下を流れる鴻の巣川の浸食によって、地層が削り取られてできたものです。
礫や砂は水を含みやすくもろいので、絶えず少しずつ崩れ落ちています。
鴻の巣の名称の由来は、昔、雁の一種の鴻(ヒシクイ)か鶴の仲間の鸛(コウノトリ)が営巣した場所と伝えられていますが、確かなことはわかりません。
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