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未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事

信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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法船寺 / 長野県松本市内田
紫陽花の記憶
 あじさいの法船寺を訪れるのはこれで3度目である。 1度目は2012年7月、2度目は2017年7月、そして今日、2020年7月である。 共通して言えることは、ともに猛暑日であることと、じりじりとした陽光に照らされて咲き誇る紫陽花の花影と、まどろんだように しん と静まりかえった境内のたたずまいである。それは忘れ得ぬ 「夏の記憶」 である。 以下の記載は過去2回の訪問における所感である。
第348回 「猛暑日」 (2012.7)
 近くにいながら訪れることがなかった法船寺を日曜の午後に訪れた。紫陽花の見頃とあって、さぞや花見客でにぎわっていると思っていたが、気温が35度を越えた猛暑日のせいか、駐車場は閑散としていた。松本平の東山麓の高台にあり、駐車場からは眼下にその全貌が眺望された。だがあまりにきつい陽光はその眺めを霞んだものとし、振り向いた法船寺の背後に仰ぐ青空は強いコントラストで堂宇を圧するがごとく迫っていた。寺域は眠ったように静かである。山号を塩沢寺といい、もとは牛伏寺の末寺であるという。山門をくぐると30種1300株余りの紫陽花が見事に咲いて迎えてくれた。
第500回 「再びの紫陽花」 (2017.7)
 紫陽花が咲く法船寺を訪れたのは2012年7月、気温35度を越えた猛暑日の昼下がりのことであった。青空は強いコントラストで堂宇を圧するがごとく迫り、寺域は眠ったように静かであった。山門をくぐると30種1300株余りの紫陽花が見事に咲いて迎えてくれたことを覚えている。今回もまた猛暑は変わりがなかったが紫陽花の花頭はぐっと少なかった。それは今年特有のことなのか、それとも地球温暖化が進行したことの現れなのか不明であるが、何事かを暗示しているように思われた。

2020.07


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