未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
信州つれづれ紀行 / 時空の旅
蓼科湖 / 長野県茅野市北山
黄昏に映える
しまいは日没を間近にした蓼科湖の燃えるような紅葉である。 かってもこのような日没をこの湖畔で迎えたことがある。 あるいは今日のしまいの地にこの湖畔を選んだのも潜在意識下にその風景がひそんでいたのかもしれない。 またあるいは、かって遠き日に飛鳥の地で遭遇した大津皇子にまつわる 「磐余(いはれ)の池の黄昏」 があったのかもしれない。
※)磐余の池の黄昏
天武天皇の長子として生まれながらも謀反の罪によって非業の死をとげた大津皇子は以下の 「辞世の歌」 を万葉集に遺している。
ももづたふ 磐余の池に鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ
また漢詩の才にも優れていた皇子は、以下の 「辞世の詩」 を現存する日本最古の漢詩集 「懐風藻」 に遺している。
金烏臨西舎 (金烏 西舎に臨み)
鼓声催短命 (鼓声 短命を催す)
泉路無賓主 (泉路 賓主無し)
此夕誰家向 (この夕 誰が家にか向ふ)
紅顔の若き皇子は誇り高くして自らの運命に殉じ、従容として死におもむいた。 時は686年(朱鳥元年)、享年24である。
2019.11
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