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未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事

信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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中ッ原遺跡 / 長野県茅野市湖東山口
仮面の女神
 縄文のビーナスが出土した棚畑遺跡を後にしてそこから東に 3 km ほどの位置にある中ッ原遺跡に向かう。 おそらく視力に優れていた縄文人であってみれば棚畑の集落から中ッ原の集落が遠くに眺められたのではあるまいか。 中ッ原遺跡からは2000年8月23日に大形土偶 「仮面の女神」 が出土発見された。 「縄文のビーナス」 の出土が1986年9月8日であるから遅れること14年余りである。 また 「縄文のビーナス」 が国宝に指定されたのが1995年6月15日に対して 「仮面の女神」 が国宝に指定されたのは2014年8月21日とつい最近のことである。 ともに縄文時代中期(約4000年〜5000年前)の土偶である。 中ッ原遺跡における 「仮面の女神」 に対する扱いは棚畑遺跡での 「縄文のビーナス」 のそれと較べて丁重さが感じられ先ほどまでの落胆は少しは報われた気持ちになった。
 仮面の女神は全長は 34 cm、重量は 2.7 kg と土偶としては大形で、顔に仮面をつけた姿を思わせることから 「仮面土偶」 と呼ばれる。 遺跡のほぼ中央に位置するお墓と考えられる穴が密集する場所で穴の中に横たわるように埋められた状態で出土した。 この出土の様子は見つかった場所に 「そのままの状態」 で保存展示されている。 置かれた女神土偶は実物ではないが発見されたときの感動がリアルに伝わってくる。 そのアバンギャルドな造形美は 「縄文のビーナス」 と較べても遜色ない異彩を放っている。
 それにしても同時代に作られた国宝 2体 の土偶が 3 km ほどの近隣圏内で見つかるとはあるいは当時このあたりは文化発信の重要拠点であったのかもしれない。 ひょっとすると 「縄文のビーナス」 と 「仮面の女神」 の作者は同じであったのではないかというような奇想天外な推理もしてみたくなる。
 ひととき縄文の時空に身を委ねたあと 「ふと空を仰ぐと」 あろうことか巨大な入道雲に隠された陽光から放射された光が仏様の光背を紡ぐ後光のように天空に広がっていた。 いまだかって見たことのない光景はあたかも 「縄文のビーナス」 や 「仮面の女神」 が時空を超えて現代に生きる私に 「何事かを語っている」 ように思えた。 それは共時性が発する 「意味ある符号」 でもあったのであろうが残念ながら私にはその符号の意味を解することはできなかった。 沸きあがったイメージはやがて縄文の時空に静かに還っていった。

2018.08


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