未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
信州つれづれ紀行 / 時空の旅
中禅寺薬師堂 / 長野県上田市前山
護持を願う
天国に旅立った親しき人の魂の冥福を静かに祈りたいと信州の鎌倉と呼ばれる塩田平にたたずむ古寺を訪れた。2年ほど前に訪れたときは晩秋の紅葉に彩色されていた境内はまだほんの色づき始めたところであった。
中禅寺薬師堂は方三間の阿弥陀堂であり、萱葺屋根の頂には宝珠が乗り、堂内には須弥壇が設けられ、台座の上には座した薬師如来がまつられている。このような形式は平安時代の終わり頃のものであり、岩手県平泉の中尊寺金色堂は、その代表例とされている。約八百年前に建立されたというこの薬師堂は信州最古の木造建築であり、国の重要文化財に指定されている歴史的建造物である。
真言宗智山派の寺であることを証するかのように弘法大師空海の石像がたたずみ縁台には真言(マントラ)が標語のように掛けられていた。静かに手を合わせ真言を唱えながら弥勒菩薩とともに兜率天(とそつてん)にいるであろう空海その人に旅立った人の護持を願った。
2017.09
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