前回( 第439回
/ 切り取られた時空間)同様に紫陽花の深妙寺からの帰路、大芝公園に寄った。デペルトの絵画の世界に迷い込んだかのような幻想的な風景は少しも変わってはいなかった。雨後の水分を含んだ樹木と芝生は生き生きとして体内の免疫に働きかけてくるようであった。人類が森での生活を去って街での生活に移って久しい。人間は生物であるからして近代化した人工の生活が体にいいはずはない。大いなる利便性の獲得の裏で失ったものもまた応分に多大である。かくなる欠落に気づいた人類が再び森の世界に回帰する日はやがていつか来るのであろうか?
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