自然の万物事象は人間が創ったものではなく、人間の意図とは無関係にこの宇宙に存在しています。これら自然界の万物事象が「完全なものとして存在している」という説と「不完全から完全に向かっての過程として存在している」とする2つの説があります。性善説か性悪説かの対比構造に似ていますが、科学的合理主義に支えられている現代社会では、後者の「ダーウィンの進化論的完全性」に賛同する人の方が多いでしょう。
ここで論じたいのは両者の正誤を検討することではありません。自然界に存在する万物事象の完全性から愚かな間違いをおかす私たちの思考を修正する方法について考えることです。
宇宙の起源は130億年以上も前に遡ります。進化論的完全性を採ったとしても、この長きに渡ってふるいにかけられた完全性は他に比較するものがありません。その結果としての「地球が丸い」、「馬の足が4本である」、「救急車のサイレン音が通過とともに高低する」等々・・は比類のない事実であり、究極の完全性です。これらの完全性から私たちの生活に役立つ価値あるアイデアを見つけだすことは最も間違いのない、かつ最も有効な方法です。
私は機械技術者ですが、松や竹や草花に備わった必要十分な強度に裏打ちされた完璧な構造などとても設計できませんし、よしんば世界で最も優秀な設計者であっても、その完成度の5%も達成できないでしょう。現代科学の粋を結集したジャンボジェット機でさえ大空を舞う鷲や鶴からすれば「出来の悪いブリキ細工」のようなしろものなのです。その証拠に墜落したり空中衝突するような鷲や鶴を寡聞にして私は聞いたことがありません。
これらのアプローチ方法を具体的に記述すると以下のようになります。
自動車の研究開発 : 馬や豹の骨格構造や運動性能の解明から
飛行機の研究開発 : 鳥の骨格構造や運動性能の解明から
船の研究開発 : ミズスマシや魚の骨格構造や運動性能の解明から
カメラの研究開発 : 人間の目の構造や機能の解明から
コンピュータの研究開発 : 人間の脳の構造や機能の解明から ・・・ 等々
これらは数限りなく列挙可能です。私たちはアイデア発見のための宝の山を前にしているのです。この方法は古くから行われていたものでしょうが人間の認識体系の集積化が膨大になるとともに次第に忘れられてしまったものです。あるいは人間意識が尊大になるにしたがって自然への畏敬の念が忘れられてしまったことにも起因しているかもしれません。私は新たな機械メカニズムのためのアイデアを生物の運動メカニズムの中から幾つも教えられました。 |