「樅ノ木は残った」 は江戸時代、仙台藩伊達家で起こったお家騒動「伊達騒動」を題材にした山本周五郎の歴史小説である。
騒動のあげく残ったのは1本の樅の木であったという物語である。 それはまた山本周五郎が帰着した 「人の一生は樅の木さえ超えることができない」
という是非なき真象に対する達観であり畏敬の念でもある。 久しくまどろんできた世界平和も英国のEU離脱や米国のトランプ大統領の出現で様相は急変、事態は風雲急を告げているように観える。
歴史はローマ帝国による 「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」 から、アメリカ合衆国による 「パクス・アメリカーナ(アメリカの平和)」
までの世界平和を語り継いできたが、パクス・アメリカーナに陰りが見えてきた今、「次なる平和」は何によってもたらされるのかを考えなくてはならない段階にきている。
換言すれば、「人々はかかる “ 騒動 ” のあげくに何をのこすのか?」 ということである。 この稿を書きながら眺めている庭の棒樫は毎年その剪定をしている私がいなくなったとしてもなお青々と生き続けるであろう。
「樅ノ木は残った」 とはそういうことである。
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