フランスの数物理学者、アンリ・ポアンカレ(1854年〜1912年)が証明した「ポアンカレ循環」の帰結は「もし永遠の時間の存在を想定すれば、あらゆる物事は出発点に回帰し、同じ循環を繰返す」というものである。この世に始まりも終わりもなく、出発点は終着点であり、終着点は出発点である。したがって、物事を始めるに、遅すぎることも早すぎることもない。であれば、物事は一日に一歩も進めば、もはや充分であり、一挙に物事を進展させることに、何らの有効性はない。何より、慌てて一挙に完成させた仕事は手筋が荒く、そのような底浅い仕事をいくら積み上げてみても、真に有益なものが生まれるとは思えない。巷間言われる「いい仕事」とは、時間をかけて、あれこれ考え、一日一歩の前進を高く積み上げたものである。
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