Linear ベストエッセイセレクション
カオス社会の構造理論
Turn

その物理学的解析
 コロナ禍に端を発する混乱は社会をカオスに導いてしまった。 物理学の 「カオス理論」 が論ずる 「複雑系」 が支配する宇宙である。 この論の根底には熱力学の 「エントロピー増大の法則」 が横たわっている。 エントロピーとはある種の 「曖昧量」 であって、エントロピー増大の法則とは時間の矢に従ってエントロピーが増大していくことを述べている。 つまり、昨日より今日の方が事態はより曖昧になっている。 情報化時代となって、次々に情報が更新されることで時間の速度が上昇していくのに比例してエントロピー増大の速度も急速に上昇する。 伴って、日々の曖昧量の度合いもまた急速に増大する。
 情報化時代における時間速度の上昇には、宇宙を記述する根本的な理論である 「シュレジンガーの波動理論」 で使用される波動方程式に組み込まれた 「波動関数」 に深く関わっている。 詳細は割愛するが、波動関数は観測によって収縮する。 収縮とはものごとを観測する度に 「新たな宇宙が発生する」 ことを意味している。 つまり、情報化社会では新たな情報が更新(観測)される度に、次々に新たな宇宙が発生する。 言うなれば、時間の速度とは、この 「新たな宇宙の発生速度」 のことを意味している。
その脱出法
 エントロピーの増大が社会をカオス化する原動力であるとして、そのカオス化を少しでも低減させるにはいかなる手立てがあるのであろうか?
 あたりまえのことであるが、上記した 「物理学的解析」 で論じた内容に則って、その原動力であるエントロピーの増大を減少させればよい。 そのためにはエントロピー増大の原因となっている時間の速度を低下させればよい。 さらに、その時間の速度を低下させるためには、その原因となっている新たな情報の更新(観測)を抑制して、新たな宇宙の発生を減少させればよい。
 手立てを平易に表現すれば、新たな情報更新(観測)の源になっている 「テレビ」 や 「ネット」 などの情報器機(計器)をできるだけ観ないようにすればよい。 さすれば、少なくとも 「あなたの生活圏の周辺宇宙」 では、新たな宇宙の発生件数は抑制され、伴って時間の速度も低下し、結果として 「カオス化の速度は低減する」 であろう。 うそのようなほんとうの話である。

2020.12.04


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