第一次世界大戦後、ユトリロの風景画は大評判を呼び画壇の頂点に上りつめ巨匠の仲間入りを果たした。母シュザンヌの再婚相手であったユトリロの友人がマネージメントを引き受けてくれたおかげで、画業は順調に発展、勲章まで受章、あげくはパリの名誉市民賞も授与されたが、ユトリロのアル中は終生に渡って直ることはなく、71歳でこの世を去った。母シュザンヌの晩年は、若い夫に捨てられ孤独な最期だったというが、72歳の天寿を全うしている。モディリアーニやロートレックは30代で亡くなっていることからすれば、母子ともに長寿であったといえる。ユトリロの強健な体は、あるいは母親譲りであったのかもしれない。では類い希なる絵の才能はどこからきたのか? 母シュザンヌが何も語らずに旅立ってしまった今では永遠の謎である。
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