学校をおえて 歩いてきた十幾年 首(こうべ)をめぐらせば学校は思い出のはるかに 小さくメダルの浮き彫りのようにかがやいている そこに教室の棟々(むねむね)がかわらをつらねている 先生はなにごとかを話しておられ 若い顔たちがいちようにそれにきき入っている とある窓べでだれかがよそ見して あのときのぼくのようにぼんやりこちらをながめている 彼のひとみに ぼくのいるところは映らないのだろうか? ああ ぼくからはこんなにはっきり見えるのに 丸山薫 「学校遠望」
2013.08.23