Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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形の場における形の共鳴〜人間を襲う熊の出現理由とは
 イギリスの天才科学者シェルドレイクが提唱した 「形態共鳴仮説(シェルドレイク仮説)」 とは、現在において自然に存在する生物の特徴的な形と行動、物理や化学のあらゆるシステムの形態が、過去に存在した同じような形態の影響を受けて、過去と同じような形態を継承することを述べている。 それは 「形の場」 における 「形の共鳴」 と呼ばれるプロセスによっているというのである。 以下は 第046回 「形態共鳴仮説」 からの抜粋である。
 形態共鳴仮説を要約すると 「形の場」 がいったんできあがると、それは時間と空間を超えて、これから発生する生物や物理に影響を与え、過去に形成されたと同じな生物や物理のシステムを再現させようとすることである。 視点を変えれば、今あるものが今のような形をしているのは、過去に同じ形のものがそのように存在したからである。
 形態共鳴仮説の重要性は、非決定的な部分をもつ個体の発生現象がいつも必然的、決定的となるのはなぜかを説明した点にある。 それは 「形の場」 がけっして受動的なものではなく、積極的に他へ働きかける 「形の共鳴」 という性質をもっていることである。 例えば、雪山の斜面を滑り降りるスキーヤーは、その前に滑り降りたスキーヤーが描いたシュプールによる 「形の場」 によって、そのシュプールをなぞるように強制(形の共鳴)される。 またダイナマイトの原料であるグリセリンは、結晶化がなされないとされていたが、ある日、ひとつの樽の中で結晶化(形の共鳴)がなされるや世界中のグリセリンがこの日を境に結晶化し始める。 時空間を越えて他の系に影響を及ぼすこれらの作用は 「形態形成場」 と呼ばれ、その影響は 「形態共鳴(形の共鳴)」 と呼ばれる。
 荒唐無稽ともいえる 「形態共鳴仮説」 は当然にして物質還元主義者からは非難の的となった。 彼らはこれらの現象は、遺伝子DNAや原子で充分に説明できるものであって、シェルドレイクの仮説は世を惑わす邪説であるときめつけたのである。 だが今やその仮説は 「形成的因果作用の仮説」 として世界的に認められつつある。
 「形の場」 はさまざまな情報で構成された 「非エネルギ的な場」 であり、その場の中で 「形の共鳴」 が作用する。 それはシステムとシステムの間にどんな空間的、時間的な隔たりがあろうとも、そこに起きる形の共鳴の強さは減じられない。 物理学が説明する 「共鳴」 の一般的概念とは、例えば振動数が同じ音叉の一方をたたいた時に近くにあるもう一方の音叉が鳴り出すような現象をいう。 これは音叉の固有振動数がピッタリ一致するためであるが、この共鳴はエネルギが一方から一方に伝達される 「エネルギ共鳴」 である。 だが 「形の共鳴」 ではいっさいのエネルギ伝達は行われない 「非エネルギ共鳴」 である。 これが通常の共鳴現象とは大きく異なる点である。
 「形の場」 における 「形の共鳴」 を単純化して語れば、猿には迷惑な話ながら、世界のどこかで一匹の猿がバナナの皮をむいて食べ出すと、その後は世界中の猿が同じようにバナナの皮をむいて食べ出すような現象である。 あるいは、なかなか突破できなかった記録が 「ある日」 誰かがひとたび突破すると、その後はいとたやすく、次々に突破する者が登場するような現象であり、露天商が雇ったひとりの 「さくら」 がある品物を買うと、その後、周りにいた群衆が次々とその品物を買いだすような現象である。 さらに例えは悪いが、ひとたび 「おれおれ詐偽」 が成功するや、その後、次々にこの種の詐偽が横行し出すような現象である。
 これもまた仮説に過ぎないのであるが、熊がひとたび人間を襲い始めるとその後、日本中の熊が堰を切ったように襲い始める。 またかってなかった異常気象がひとたび発生するとその後、次々と頻発し始める。 これらの昨今の現状を鑑みれば、あるいは、これもまた 「形態共鳴仮説(シェルドレイク仮説)」 のなせる業なのかもしれない。

2025.10.26


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