さらに 「どこにもいてどこにもいない」 という構造は、シュレジンガーの波動理論がいう
「あらゆる場所に存在するとともにあらゆる場所に存在しない」 とする 「宇宙の量子構造」 に相似する。 存在としての量子は 「波動と粒子の二重性」
をもっている。 意識的観測が為されるまでの量子は、「波動性をおびて」 宇宙空間の全域に広がっていて、そのどこにも存在し、かつまたどこにも存在しない。
だがひとたび宇宙の局所で意識的観測が為されるや 「粒子性をおびて」 宇宙空間の局所にしか存在できない。 空海が唱えた 「仏として生きる」
とする求道精神は、これらの量子性を体現したものであろう。 当然にして 「時間も空間もない現在だけのシンプルな宇宙構造」 や 「ボーダーレス(無境界)でセンターレス(無中心)の宇宙構造」
もまた十分に理解していたに違いない。
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