未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
永遠は瞬間にあり
降る雪や 明治は遠く なりにけり
俳人、中村草田男が詠んだ句である。 雪が降り始めた瞬間に、明治時代が遠い過去のものになったと強く感じた様子を表している。 明治時代と現代との時間の流れ、そして過去と現在との距離を捉えた、時間と記憶の美しさ切なさを描いている。
新しき 年の初めの初春の 今日降る雪の いやしけ吉事
万葉歌人、家持が最後に詠んだとされる歌である。 天平宝字3年(759年)正月1日、因幡の国庁で詠まれた。 万葉集全20巻の最後を飾った歌として知られている。
中村草田男は 「降る雪に」 過ぎ去った日々を思いめぐらし、大伴家持は 「降る雪に」 来たり来る日々を思いめぐらす。 互いの時空は千数百年隔たっていても微塵も変わることなく 「今まさに」 その日の雪が降っているのだ。 「永遠は瞬間にあり」 の時空の実相を描いてあまりある。
2025.05.02
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