Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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大崩壊への既視感
 人類は今に至るまでに大きく 「4つの時代変化」 を経験してきた。 狩猟採集社会→農耕社会→工業社会→情報社会に至る 「4つの社会変遷」 である。 前3つの社会と現代の情報社会の間には決定的な違いがある。 それは社会を構成する基本資産が物質的な有形資産から意識的な無形資産へと移行したことである。 現代社会に対する戸惑いの大半はそこから発生している。
 本稿ではその本質的な違いについて、さまざまな視点から探求してきた。 それは 「社会学的物理学」 の視点から、不確実性社会がもたらした 「確信の終焉」 の視点から、物質的実在論から意識的実在論への移行を描いた 「新たな物理学」 の視点から ・・ 等々と多岐にに渡る。
 だが最も大きな違いは、「棍棒や機械を道具」 としてきた人類が、「コンピュータを道具」 としたことであろう。 棍棒や機械は物質的な有形資産に対応して発明された道具であることに対して、コンピュータは意識的な無形資産に対応して発明されたものである。 必要は発明の母とは真理である。 20世紀末から始まった情報社会はこの道具なしには成立しなかったであろう。
 そして現在、それはコンピュータから生まれた 「人工知能という道具」 に引き繋がれようとしている。 かって、イギリスの宇宙物理学者、ホーキング博士は 「完全な人工知能の開発は人類の生存に終止符を打つだろう」 と警告した。 だがその警鐘を 「どこ吹く風」 とばかりに、多くの聴衆は聞く耳をもたなかった。 だがその人工知能を使った、実在する人物の顔や声を模倣する 「ディープフェイク」 と呼ばれる技術が登場するや、事の真偽は容易には確かめられない状況に陥ってしまった。 嘘と誠の狭間で事の真相を常に検証しなければならないことは人類に多大な精神的ストレスをもたらすとともに、マインドをコントロールされた互いの心は引き裂かれ、やがては修復不能なものとなってしまうであろう。
 従前の3つの時代変化をつつがなく乗り越えてきた人類は今、「危機存亡の最中」 に陥ってしまった。 「ディール(駆け引き)が世界の大義になる時代」 で描いたアメリカ合衆国の現状はかくしてもたらされた不確定性社会における 「確信の終焉」 を露呈 しているかのようにみえる。 現代の若者が多用する 「それマジっすか?」 が霞んでしまうほどに事は重大である。 複雑系カオス理論から導かれた 「バタフライエフェクト」 はささいな出来事が大崩壊を引き起こすことを明らかにしている。 ゆめゆめ油断してはならない。

2025.03.23


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