Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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細部と全体の狭間〜ホロニックな宇宙
 「Pairpole 宇宙モデル」 は大乗仏教における中心経典である 「華厳経」 が描く 「ホロニックな宇宙」 に相似する。
 「一はすなわち一切であり、一切はすなわち一である」 とする華厳経の教義は、「細部は全体、全体は細部」 という 「フラクタル宇宙」 に帰着する。 フラクタルとは、フランスの数学者、ブノワ・マンデルブロが導入した幾何学概念であり、「全体の形状と部分の形状が自己相似になっている」 というものである。 フラクタルの幾何学概念は、宇宙は入れ子状に重層的に階層を成し、「万物は相互にその自己の中に一切の他者を含み、相互に関係しあい、円融無礙に旋回しあっている」 とする宇宙構造を提示する。
 またフラクタルの幾何学概念には、ホロニックな秩序が内蔵されている。 ホロニックとは 「どんな部分にも全体の動向がふくまれているような関係性で語られるひとつの 「部分=全体系」 のことである。 ホロニックを構成する部分には全体系がもつパフォーマンスが入れ子状に内蔵されているとともに、相互に連携している。 我々は通常、部分と全体の応変を同時に見ることはできないが、ホロニックな関係性においては同時にとらえることが可能である。
(※) この 「ホロニックな特性」 を使って開発された 「ものづくりのための知的ツールシステム」 は研究開発のための課題解決に向けた思考支援システムとして運用されている。
 理論物理学者、デビット・ボームが説く 「目に見えるすべての明在系には、宇宙の一切を統御する暗在系(宇宙の内蔵秩序)が含まれている」 とする宇宙構造は、「ホロニック」 な内蔵秩序の存在を語っている。 また華厳経の 「存在するものは、すべて心の表れである」 とする教えは、宇宙論物理学者、ジョン・アーチボルト・ウィーラーが言う 「宇宙とは現象である」 とする説に等価的同意である。
 かくして、私は構築した 「Pairpole宇宙モデルの帰結」 を以下のように結んだ。
 環状連鎖ウェーブコイルは群を成し宇宙空間に散在している。 この風景はまた池の水を顕微鏡で覗いた時に見える風景でもある。 大宇宙と小宇宙の区別はどこにもなく、細部は全体であり、全体は細部である。 つまり、宇宙には大きさはなく、構造のみが存在するのである。 我々自身が一杯のコップの水の中の宇宙に存在しているのか、池の水の中の宇宙に存在しているのか、はたまた大海の水の中の宇宙に存在しているのかという 「フラクタルの階層」 を特定することは永遠に不可能である。 あれよりこれが大きいとか、小さいとか、遠いとか、近いとかのサイズの概念は我々人間が生活上の必要性から創った概念であり宇宙の概念としては適用できない。 この人間が創ったサイズの概念が 「宇宙の果て問題」 を発生させたのである。 つまり、「宇宙の果てはどうなっているのか?」 という問いである。 この問いを解いた人は未だいない。 それは大きさという概念をもって考えるからであって、この概念を捨て去れば問題は難なく解ける。 つまり、宇宙とは 「仕組み」 という概念であり、「大きさ」 という概念ではない。 大きさという概念がなきところに宇宙の果という概念はもとから存在しないのである。 この仕組みこそが宇宙の構造でありメカニズムである。 この宇宙の仕組みがなぜにこのようなのかは、もはや神のみぞ知るところであろう。

2024.12.23


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