環境省と日本自然保護協会は国内各地で動植物の状況を定点観測した結果、里山に生息する鳥類の
15%、チョウ類の 33% で個体数が年 3.5% 以上のペースで減っているとの報告書を公表した。 この減少ペースが長期間続けば、スズメなどの身近な鳥やチョウが環境省レッドリストの絶滅危惧種の判定基準を満たす可能性があるという。
環境省によると、地球温暖化で生存に適した気温ではなくなったことや、管理されなくなった里山が増えて生息環境が変わったことなどが背景にあるという。
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最近、雀(スズメ)を見なくなったと思っていたら、どうやら杞憂は現実化していたようである。
文明における 「人工と自然の乖離」 は急激な加速度をともなって進行している。 放置すればやがては人類そのものが絶滅危惧種に指定されるような事態にもなりかねない。
「知らぬが仏」 の喩えもあるが、「知らぬが人」 では笑うに笑えない。
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約6600万年 前に絶滅した恐竜は、それでも
1億6000万年 もの繁栄を保った。 彼らが自然に任せて何もしなかったがゆえであろう。 また狩猟採集に明け暮れた縄文人は 1万2000年
の平穏を保った。 彼らが自然人として生きたがゆえであろう。 その後に始められた稲作農耕による弥生時代から 2300年 ほどで人類の絶滅が危惧される状態に立ち至っている。
彼らが自然から人工へと生き方を変えてきたがゆえであろう。 それらを俯瞰すると、そこには自然から人工への移行にともなう厄害が歴然と横たわっている。
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そして今、自然は衰退に向かい人工が隆盛に向かっている。
人は自然の首を絞め、多様な生物の首を絞め、もって自らの首を絞めようとしている。 どうしてそれに気づかないのであろう。 愚かさもあまりに大きくなると自覚されないものなのか?
それとも 「灯台もと暗し」 のごとく、遥か遠くにあるものは見えても、足もと近くにあるものは見えないものなのか?
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アダムとイブは蛇にそそのかされ禁断の果実であるリンゴを齧ったことで楽園を追われたというのだが、その禁断の果実とは、あるいは
「人工という名のリンゴ」 であったのかもしれない。 ふとそんな想像が浮かんできた。
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