Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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機の本質
 情報社会は人と人の情報戦であって、それはまた人と人の心理戦の様相を呈する。 注目すべきは、そこに流れている 「リズム(拍子)」 である。 リズムを乱すようではその戦いに勝つことはできない。 逆に相手は、そのリズムを乱そうとするが、自らのリズムを踏襲して気息を乱してはならない。
 情報社会は、あらゆるリズムのバトルロイヤルの様相を帯びている。 それらのリズムに、一喜一憂していては 「平常心」 を保つことはできない。 平常心が破れれば自滅への道に至るのは必定である。
 剣豪、宮本武蔵は、自らの兵法を記した 「五輪書」 で以下のように書いている。
 物毎のさかゆる拍子、おとろふる拍子、能々分別すべし。 (物事にある栄える拍子と衰える拍子は、よくよく分別しなくてはならない)
 兵法の道において、心の持ちやうは、常の心に替る事なかれ。 (兵法の道において心の持ちようは、平常心と変わってはいけない)
 物毎に勝つといふ事、道理なくしては勝つ事あたはず。 (戦いに勝つということは、正しい道理なしには勝つことは出来ない)
 ある所をしりてなき所をしる、是則ち空也。 (ものが有る所を知って初めて、無い所を知ることが出来る、これがすなわち空である)
 「リズム(拍子)」 とは、「間」 であり、「調子」 であり、「タイミング」 である。 それらは 「機の本質」 であって、「勝機」 は常にその狭間に隠されている。 武蔵はその道理をよくよく分別した(認識した)ということであろう。

2024.05.13


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