現代人が自覚しない 「大いなる欠落」 については、ここ数回に渡って論考してきた。 ひとつは 「客ばかりを追求することで、主そのものが失われてしまうという欠落」であり、もうひとつは 「過去や未来ばかりを追求することで、今の今である実在としての現在が失われてしまうという欠落」 である。

　現代社会で発生しているさまざまな 「トラブルの諸相」 を考察すれば、その大半の原因がかくなる 「２つの欠落」 に起因していることに帰着する。 それは、客である票田ばかりに注目して、主である自らの信条を省みない政治家しかり、客である市場に向かっての広告宣伝ばかりに専念して、主である自らの製品やサービスを省みない企業家しかりである。 自民党の裏金問題、中古車販売会社の自動車保険不正請求、製薬会社の健康食品販売にまつわる腎機能障害等々。 その弊害は数えだしたら切りがない。 主体である自らの世界の空白を省みずして客体の世界にアプローチしてみても 「何も得られない」 ことは少し考えれば分かることであろう。 自覚すべきは 「自らの世界」 であって、目指すべきは 「自らの確立」 である。