未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
自らを貫く
この世を生きるにおいて最も必要なことは 「自らを貫く」 ことである。 自らが思うところに準じて自らの行動を処することは王陽明が説いた 「陽明学の心髄」 である。 これが成されなければ、足は地に着かず腰も据わらない。 これでは 「ものの役」 には立たない。
幕末の1860年、日米修好通商条約の批准書交換のため、勝海舟を艦長とした咸臨丸で太平洋を渡ってアメリカのサンフランシスコを訪れた幕府使節団の行列に接した現地の人々は、子供のように小柄ではあったが、腰の据わった堂々とした立ち居振る舞いの見事さに感嘆したと言われる。 それは自らを貫くことに徹した武士道が発した躍如たる光彩であった。 だが現在の日本人は体躯こそ目覚ましく向上したが、堂々とした立ち居振る舞いの 「よすが」 はどこにも感じられない。 自らを貫けなくなった結果がこれである。
2024.03.22
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