Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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本当の幸せとは
 大手回転寿司チェーン 「はま寿司」 の店内は休日の昼時とあって満席であった。 先ほどから隣のテーブル席では小学生の兄と妹と若夫婦の4人の家族が織りなす愉しげな団欒が続いている。 「さーて、食べたら ヤマダ電機 へ行くぞ!」 父親の昂揚したかけ声で視線を向けると2人の子供は喜びの笑顔でそれに応えていた。 そのとき 「君、これが幸せというものじゃないかね」 という声が脳裏に降ってきた。 それは映画 「フーテンの寅」 の名台詞であった。
 以下は 第1674回 「吟遊詩人」 からの抜粋である。
 例えば、日暮れ時、農家のあぜ道を一人で歩いていると考えてごらん。 庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間。 灯りが明々とついて、父親と母親がいて、子供達がいて賑やかに夕飯を食べている。 これが ・・ これが本当の人間の生活というものじゃないかね、君。
 のちにこのエッセイを読んだ友人がとある法事で自らの体験と効果的な創作を交えてこの名台詞の風景を語ったところ 「いやーいい話を聴いた、次も頼む」 といたく感謝されたというのだ。 嘆息まじりに話してくれたのだが、私にはそのときの彼の姿が目に浮かぶようであった。
 日暮れ時の農家の茶の間の風景は時がめぐって回転寿司のテーブル席の風景に代わったが、そこに流れている本質には何ら変わりはない。 法事で語った友人は次は回転寿司の風景に代えて話すのであろうか ・・ それを想っていると、ふと笑いがこみあげてきた。

2024.02.19


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