Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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決定論的社会から確率論的社会への相転換
 ニュートン力学からアインシュタインの相対論までの 「宇宙はこうである」 とする 「決定論的物理学」 はハイゼンベルクの不確定性原理、ボーアの量子論、シュレジンガーの波動理論等々が登場するや 「宇宙はこうであるかもしれないし、そうでないかもしれない」 とする 「確率論的物理学」 へと進路を転じた。 その間の年代を列記すると以下のようになる。 進路を転じて100年が経過したことになる。
ニュートン : 自然哲学の数学的諸原理 1687年
アインシュタイン : 特殊相対性理論 1905年 / 一般相対性理論 1916年
ハイゼンベルク : 不確定性原理 1927年
ボーア : ノーベル物理学賞を受賞 1922年
シュレジンガー : 波動理論(波動方程式)を発見 1925年
 ボーアが提唱した確率論的物理学としての量子論をどうしても認めることができなかったアインシュタインは、夜空にかかる月は見上げているときには存在するが、見上げていないときには存在するかどうかはわからないなどという考えは馬鹿げている。 「神はサイコロをふらない」 とボーアを辛辣に批判した。 それに対するボーアの返答は 「神にむかってあれこれ指示することはやめなさい」 というものであった。 そこには 「こうである宇宙」 と 「そうでないかもしれない宇宙」 を信じた両者の価値観の違いが明瞭にあらわれている。
 その後、確率論的物理学はコンピュータの目覚ましい発展をもたらし、現代情報化社会に至る礎を築くことになる。 だがその結果としてエントロピは急激に増大し、社会は不確定で曖昧な混乱と混迷に満ちた世相に向かうことになってしまった。 それらの状況に呼応するように物理学はカオス理論やバタフライエフェクト等々の複雑系を主体としたニューサイエンスに探求の軸足を変えていったのである。
 決定論から確率論への相転換は社会構造にも応分の変容をもたらした。 それは 「約束された社会」 から 「約束されない社会」 への相転換であり、「確かな明日」 から 「不確かな明日」 への相転換である。 未来に対する計画は安定した 「長期計画」 から不安定な 「短期計画」 へと変更を余儀なくされる。 しかり、「複雑怪奇な社会」 の登場である。 それが現代社会の実相であるとするならば、次なる問いは 「何が社会の数奇を決定するのか?」 になるのは必然の帰結である。

2024.02.13


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