Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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予見された事態
 以下は 第421回 「遙かな旅人」 からの抜粋である。
 現代人が個で生きれずに集団に頼るのは、集団を信頼しているからではなく、生きるための 「利便性」 からである。 ゆえに、会社、団体、組合、政党、派閥、宗派、サークル、仲間等々の個別集団は個が生きる上での利便性の目的から構築されているに過ぎない。 このような個別集団の中で叫ばれる団結心、忠誠心、協調性等々の倫理観は、その利便性目的が 「保証される限り」 という限定された倫理観である。 ゆえに、個に対する利便性目的が失われればかかる団結心、忠誠心、協調性等々の便宜的倫理観はたちどころに紙屑のごとく捨てられる運命にある。 現代個別集団の離合集散メカニズムの本質は、かかる利便性目的の保証にこそあるのであって、その保証が失われれば、裏切り、不実、偽善等々、茶飯事として常態化することになる。
 このような現代社会の世相メカニズムに抗して人が 「いかに生きるのか」 を問い、追求することはまことに孤立無援、孤独で遙かな旅路を覚悟せざるを得ない。
滄海一漂鳥 山中一花樹
 作家、澤地久枝はこの対句を好んで書くという。 紺青の大海原を一羽の鳥が漂い、山中奥深く人知れず一輪の花が閑寂として咲いている。 他人に対するあまえから毅然として離脱し、頼るべきは唯一、己自身であるとする 「遙かな旅人」 の気宇壮大な気概が凛として伝わってくる。
 これを書いたのは2004年4月のことであった。 時はめぐり、発覚した裏金問題で派閥消滅の危機に瀕している自民党の政治状況を鑑みると 「事態は予見した通り」 となったことになるのだが 「何を言わんや」 の嘆息しきりである。

2024.02.11


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