未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
縁の構図とは
以下は
第731回
「フロイトとユング」 からの抜粋である。
心理学者のフロイト(1856 〜1939)とユング(1875〜1961)の違いはどこにあったのであろうか? フロイト心理学は 「潜在意識とコンプレックス」 を中心にした意識メカニズムを課題とし、ユング心理学は 「集団的無意識と共時性」 を中心にした意識メカニズムを課題とした。 フロイトは謹厳実直で陰的な性格を保持し、過去にこだわり、ユングは奇想天外な陽的な性格を保持し、未来にこだわった。
第228回
「鬱病と分裂病」 では、鬱病は過去にこだわることにより発症する精神病であり、分裂病は未来にこだわることにより発症する精神病であるという精神科医の話について書いた。 この対比から考えるとフロイトの分析方法は多分に 「鬱病的」 であり、ユングの分析方法は多分に 「分裂病的」 である。 過去時空から心理学を創始したフロイトと未来時空から心理学を創始したユングの構図を、物理学的に考えると相対論を創始したアインシュタインと量子論を創始したボーアの対比構図に置換される。 アインシュタインは多分にフロイト的であり、ボーアは多分にユング的である。 フロイトとユングが互いに相手を否定したと同様、アインシュタインとボーアもまた互いに相手を否定した。 アインシュタインは 「神はサイコロを振らない」 という有名な言葉でボーアを批難したが、ボーアの反論は 「神に向かってとやかく指図するのはやめなさい」 というものであった。 「月は眺めているときには在るが、眺めていないときに在るかどうかはわからない」 などというボーアの確率論的な量子論の考え方を審美的な自然観をもつアインシュタインは生涯に渡って受け入れることができなかった。 同様にフロイトはユングの明るく開放的で未来性に富んだ心理学は受けいれがたく、ユングはフロイトの暗く閉鎖的で発展性がない心理学を肯定できなかったのである。 (2013.04.25)
さらに言えば、フロイトの心理学は 「
ペアポール宇宙モデル
」 における時空を時間軸に沿って断面した時間が継続する因果律的な 「連続宇宙の世界」 の意識構造を表し、ユングの心理学は時空を時間軸に垂直に断面した時間が断裂した超因果律的な 「刹那宇宙の世界」 の意識構造を表している。
フロイトの心理学が描く因果律的な 「潜在意識とコンプレックス」 の描像は、かくなる 「連続宇宙での精神風景」 であり、ユングの心理学が描く超因果律的な 「集団的無意識と共時性」 の描像は、かくなる 「刹那宇宙での精神風景」 である。
以上の精神構造を、今課題としている 「縁」 をもって考えれば、因果律的なフロイトの心理学は 「過去としての親ガチャ」 の 「縁の構造」 を表象している。 曰く、「親の因果は子に巡る」 という図式である。 他方、超因果律的なユングの心理学は 「未来としての融通無碍」 の 「縁の構造」 を表象している。 曰く、「何ごとも生きてみなければわからない」 という図式である。
2023.11.21
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