Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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リンゴはもう一度齧ればいい
 「相対と絶対は同時に存在する」 それは、一枚の紙の裏と表が同時に存在する構造と同じである。 同様に善と悪は、しかして理想と現実は同時に存在する。 「身の迷い」 は、しかして 「世の争い」 は、片方だけに固執するところから生まれる。 あるがままに(Let It Be)の自然体は、相対と絶対を同時に受け入れるところに生まれる。
 禅の大家、鈴木大拙翁が西欧で講話をした折のこと。 アダムとイブは蛇にそそのかされ禁断の果実であるリンゴを齧ったことで楽園を追われた。 質問者は 「永遠に楽園を追われた私たちはこの先どうしたらいいのか?」 と問うた。 大拙翁は間髪を入れず 「もう一度齧ればいい」 と答えた。 それを聞いた聴衆は 「オー」 と感嘆の声をあげたという。 一言にして、西洋思想の欠落を看破し、絶対と相対を同時に生きた鈴木大拙を表象する面目躍如たる風景である。

2023.10.10


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