人間の存在理由がこの世界をかくこのように存在させる 「意識的観測」 であるとするならば、何はなくとも、日々この意識的観測を継続しなければならない。 なぜなら、波動理論における 「宇宙の発生」 がこの意識的観測による波動関数の収縮によって惹起されるからに他ならない。 ここで重要なことは 「何を観測するか」 という 「意識の方向性」 である。

　現象学を創始した哲学者、フッサールの説を借りれば、意識は常にみずからをこえて、意識の外へと向かう 「志向性」 を持っている。 その意識が志向する外界の実在性についての素朴な思いこみをいったん 「保留」 し、内面的な 「純粋意識」 の事実に立ち返って 「意識の現象」 をありのままに見つめることで、純粋意識から世界が構成される。

　そうであれば、世界を構成する（宇宙を発生させる） 「内面的な純粋意識」 とは何であろう？ それは、少なくとも自らを超えて志向する思いこみに至る具象的な意識ではなく、志向性が希薄な抽象的な意識であろう。 志向性もった具象的な意識を 「言語的な意識」 とすれば、志向性が希薄な抽象的な意識は 「音楽的な意識」 とでも対比されようか？ 曰く、宇宙は音楽から生まれるのだ。 畢竟如何。

※）志向性とは
　意識や、考えや、気持ちがある方向や対象に向くさま。 あることをしようと思い定めたり、心に目標を定めたり、そこに向かって進もうとするさま。