Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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確信の終焉の意味するもの
 非平衡熱力学における散逸系の研究 「自己組織化」 でノーベル賞を受賞、「混沌からの秩序」 を描いたイリヤ・プリゴジンはカオスや複雑系の概念について以下のように述べている。
 これらの概念は、今後、科学者だけでなく、社会一般に広く受け入れられていくであろう。 素晴らしい統一理論が存在するとする社会的通念は、宗教上も政治上も芸術上も、そして科学上も希薄になりつつある。 たとえば信心深いカトリック教徒も、その親や祖父母たちに比べれば、たぶんそれほど深くは信じていないだろう。 私たちはもう前のようにマルキシズムや自由主義にこだわってはいない。 私たちはもう古典的な科学を信じてはいない。 同じことが芸術、音楽、文学についても言える。 社会は多様化した人生観や世界観を受け入れることを学んだのだ。 人類は 「確信の終焉」 を迎えたのだ。
 確信の終焉は 「何でもあれの価値観」 を沸きあがる泡沫のように次々と発生させる。 しかして、その泡沫のどれが 「実」 で、どれが 「虚」 であるのかを、誰も確定することができない。 信じる基軸を喪失した人間にとって、それは当然の帰結である。
 では、人間はいったい 「何を依りどころ」 にしたらいいのであろうか? 試すべきは、価値観の彼方にある 「幸福観」 への思考転換である。 曰く、「幸福とは何か」 という問いに対する解答である。

2023.06.06


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