未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
永遠は虚空に架かる
哲学者、ニーチェの永遠回帰の構造とは 「円環を成す宇宙」 であって、今の今という現在を起点として未来に向かうと過去に至り、その過去から再び今の今という現在に回帰するというものである。 今の今という起点は円環上のすべての点であって、そこは 「始点」 でもあり 「終点」 でもある。
であれば、時間の断裂した刹那の狭間に拓かれた 「永遠の空間」 とは、過去と未来が衝突する円環上のすべての点である 「今の今」 である。 そこは永遠の空間の始点でもあり終点でもある。 勿論、そこには過去も未来もない。
第407回
「風鈴は虚空に架かる」 では、その 「永遠の空間のありか」 が暗示されている。 風鈴は、家の軒先に架かっている。 だがその家は、大地(地球)に架かっている。 しかしてその地球は、虚空に架かっている。 誰しも磐石な依りどころに架かることを欲するが、この世には確固たるものなど何ひとつないのである。 かくあれば、永遠の空間もまた 「虚空に架かっている」 と考えれば合点がいく。
随筆家、白洲正子は自らの著作に 「名人は危うきに遊ぶ」 という表題を冠した。 おそらく彼女も内心では、虚空に架かった 「永遠の空間」 に遊ぶと言いたかったのかもしれない。 古人はこの世を 「浮き世」 と呼んだ。 言い得て妙である。
2023.04.08
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