Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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人材は自然の中で育まれる
 演歌 「北国の春」 で謳われた春が漠然と雪深い東北の山村であろうと思っていた私は、それが作詞家 「いではく(1941年~)長野県南佐久郡南牧村」 の故郷にあった情景であることを知って、意外な思いにかられた。 その地には北国の春の歌碑が立っているという。
 いではくは、長野県野沢北高等学校を経て早稲田大学商学部へ進んでいる。 野沢北高等学校の同窓には他に、アニメ映画 「君の名は」 の監督 「新海誠(1973年~)長野県南佐久郡小海町」 や日本人最年長宇宙飛行士 「油井亀美也(1970年~)長野県南佐久郡川上村」 がいる。 あるいは彼らに共通する 「心象風景」 とは北国の春に描かれた 「山に辛夷(コブシ)や山吹が咲き、川辺に朝霧に煙る水車小屋が佇み、遠くにわらべ唄が聞こえるような 「山里の情景」 ではなかったかと 「ふと」 そんなことに想いが至った。
 人はその者が生まれ育った自然環境から多大な影響を受ける。 作詞家、いではくにして、アニメ作家、新海誠にして、宇宙飛行士、油井亀美也にして、備わった 3者3様 の才能は、彼らをとりまいていた豊かな自然によって育まれたことは紛れもない事実であったに違いない。
 風光明媚な観光地として知られる野辺山高原(長野県南佐久郡南牧村)は、日本国内でも屈指の 「星空の名所」 であって、天文学者が選ぶ 「日本で一番綺麗な星空ベスト 3」 として、沖縄県石垣島、岡山県井原市美星町とともに、「日本三選星名所」 に選ばれている。 野辺山駅は標高 1345.67m とJR線の中では一番高所に位置する駅であり、近くには 「国立天文台 野辺山宇宙電波観測所」 がある。 備えられた 「口径 45m 電波望遠鏡」 は、波長が 1~10 ミリメートルのミリ波と呼ばれる電波を観測できる世界最大級の電波望遠鏡である。 電波望遠鏡は、人間の目(可視光)では見ることができない宇宙の姿を観測することができる。 野辺山宇宙電波観測所では、天の川銀河の星間ガスの分布から様々な星がどのように誕生するのかを調べたり、またその天の川の中心近傍に中質量ブラックホールの兆候をとらえたり、生命素材物質の形成過程にせまるなど、多くの成果をあげている。
野辺山宇宙電波観測所 / 長野県南佐久郡南牧村
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 庶民からすると、いささか浮世離れしたところと感ずるが、観測の目は年間休むことなく宇宙の彼方に向けられ、人類がこの世に存在する 「奇跡の意味」 を探し求めているのである。

2023.02.26


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