未来を寂寥がたちこめている。 いかんともしがたい。 胸おどる希望はどこへ行ってしまったのか？ 歓喜の歌はどこで響いているのか？ そして ・・ 緑なす大地はどこに消えてしまったのか？

　ドラマ 「Dr.コト―診療所」 に登場する架空の島 「志木那島」 は、沖縄県の与那国島を使ってロケされたものである。 与那国島は日本で一番最後に夕陽が沈む日本最西端の国境の島で、手つかずの雄大な自然に満ちた秘境のようなところで、東京からの距離 約2000km、人口 約1700人、面積 約29平方km、車を使えば1時間ほどで周回できる。 島には小学校 3校、中学校 2校があるが、高校は沖縄本島か石垣島に渡らなければならない。 台湾までは 110kmほどで、天気がよければその陸地が見えるという。

　2003年に始まったドラマは主演した吉岡秀隆の演技と相まって、それまでの医療ドラマとは異なった作品として今尚、語り継がれる 「ヒューマンドラマ」 となった。 このドラマの魅力は離島の過酷な医療状況が互いを思いやる島民の人間性や、ゆったりと流れる時間の下で、情緒豊かに描かれているところにある。 それは都会ではすでに失ってしまったものであるが、絶海の孤島の中ではかろうじて奇蹟のように息づいているのである。

　描かれた 「美しき世界」 がこの先も朽ちることなく生き続けていってくれることを願わずにはいられない。