「物のあはれ」 を説いた江戸時代の国学者、本居宣長(1730〜1801年)は、人が言葉を使っているのか、それとも言葉が人を使っているのか、を見抜くことが言語研究の基本であって、言葉の表面の意味は二の次であると考えた。
宣長にとって 「物」 とは、考える行為に必須な条件であって、「あはれという物」 を考え詰めた人であった。 考えるとは、単に物に対する知的な働きではなく、物と親身に交わることで、物を外から知るのではなく、物を身に感じて生きる経験をいうのである。
宣長はそのひと筋に生きた人であった。 その宣長からすれば、「世の物しり」 をしきりに嫌ったこともかくしかりと頷けることである。
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