Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

言語領域と多世界宇宙構造
 工業社会が 「新たな製品の創造」 からもたらされたように、情報社会は 「新たな言語の創造」 からもたらされるであろう。
 「社会学的エントロピ(あいまい量)」 が増大する現代情報社会では、新たな言語は多く若者から創造される。 マジすか、かみってる、エモい、激アツ、親ガチャ、無理ゲー、ディスる、なるはや ・・ 等々、年配者が聞いたところでは何を言っているのか分からないのだが、彼らは自由にそれらの言語を使いこなして 「独自の世界観」 を表現しているのだ。 彼らの新しい世界はこれらの言語とともに存在している。 だが創造された言語の寿命はそう長くはない。 かくなる言語が使われなくなると、存在していた新たな世界は時代の彼方に瞬く間に消え去ってしまう。 まさに 「泡沫(うたかた)の世界」 である。 だからと言って、心配することはない。 次なる若者世代が矢継ぎ早に新たな言語を創造して新たな世界を将来させ、その存在は途切れることはない。
 このような若者言語とその世界構造との相関は、使われる言語領域によって世界が多重、多連の構造を成して存在していることを暗黙裏に示唆している。 つまり、成人が存在する世界は成人の言語領域で創造された世界であり、老人が存在する世界は老人の言語領域で創造された世界であり、政治家が存在する世界は政治家の言語領域で創造された世界であり、芸術家が存在する世界は芸術家の言語領域で創造された世界であり、詩人が存在する世界は詩人の言語領域で創造された世界であり ・・ 等々である。 これらの世界が重なりあって、連なりあって存在するのが情報化時代における世界構造(社会構造)というわけである。 これらの世界構造はあたかも最先端宇宙論が説く 「多世界宇宙の構造」 を眺めているかのような錯覚を覚える。

2022.12.13


copyright © Squarenet