未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
吟遊詩人
たそがれの街角。 街には安らぎがおとずれ誰もがふと我にかえる。 舗道に落ちた長い人影が明日に向かって立ち尽くしている ・・ ここまで書いて不意に
第821回
「名台詞は文化遺産」 の中で掲載した映画 「フーテンの寅」 の名台詞が思い出された。
例えば、日暮れ時、農家のあぜ道を一人で歩いていると考えてごらん。 庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間。 灯りが明々とついて、父親と母親がいて、子供達がいて賑やかに夕飯を食べている。 これが ・・ これが本当の人間の生活というものじゃないかね、君。
のちにこのエッセイを読んだ友人がとある法事で自らの体験と効果的な創作を交えてこの名台詞の風景を語ったところ 「いやーいい話を聴いた。 次も頼む」 といたく感謝されたというのだ。 嘆息まじりに話してくれたのだが、私にはそのときの彼の姿が目に浮かぶようであった。
※)吟遊詩人 : 民衆的な歌を歌いながら諸国を遍歴した詩人
2022.10.03
copyright © Squarenet