Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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言葉の退廃
 現代人の言葉から力が失われ 「戯言(たわごと)化」 してしまったのは、言葉が現実から遊離してしまったことによる。 かって踏襲された 「有言実行」 は 「有言不実行」 へと移行し、今や必ずしも実行を確約するものではない。 それは確率であって、その確率は日増しに下がり続けている。 そのうち 「10に1つ」 実行されれば上出来ということにもなりかねない。 言葉を基とした公約や、契約や、条約や、誓約 ・・ 等々の約束の履行が 「10に1つ」 の確率となってしまっては、もはや社会を維持することは能わず、たちまちにして崩壊してしまうであろう。
 かくなる 「言葉の退廃」 をまねいた原因は、情報技術(コンピュータ技術等)の発展による意識世界の急激なる膨張(インフレーション)であり、ものごとの曖昧量を表すエントロピの増大による社会構造の複雑化 ・・ 等々であろう。 だが根底にあるのは、科学技術発展による利便性の飛躍的向上である。 結果。 人間からは忍耐力が失われ、生活は豊饒と安逸へと急激に下落してしまったのである。 その中で生きる人間の言葉から力が失われて戯言化してしまうのは、むしろ当然至極の成り行きであろう。その経過は 第1645回 「近代文明の宿痾〜我々が見失ったものとは」 に詳しい。

2022.07.26


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