早逝した宮沢賢治の作品の大半は死後に出版されたものであって、生前に出版されたものは、童話としての
「注文の多い料理店」 と、詩集としての 「春と修羅」 の2冊だけである。 「春と修羅」 は自費出版のようなもので、世間からはまったく評価されずわずかしか売れなかった。
作中の言葉の数々は異質で難解であるとともに、あまりに特異な世界観と描写に時代が追いつけなかったのであろう。 だがその豊かな個性が気づかれ始めてからは、時代と国境を越えて、今も尚、人々を魅了し続けている。
詩は絵画に似て見る人や読む人に応じて受け取り方が異なる。 「春と修羅」 の序文で賢治は自分の存在をひとつの 「現象」 であると書いている。
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