物理法則は時間の矢を逆にしても等価的に成立する。 分かり易く言えば、とある物体運動を撮影したビデオ映像を逆回しに再生しても、その物体運動を記述する運動方程式はまったく同様に成立するのである。
あえて誤りを怖れずディラックとマヨラナの違いを一気に還元すれば、無からの有の発生を考えるバックグラウンドとして 「虚のエネルギで満たされた真空を想定したディラック」
と 「過去に向かう虚の時間を想定したマヨラナ」 という対比構図に帰着する。 私のような工学的メカニズムの技術者からすれば 「虚の時間」
を構想したマヨラナの予見は目から鱗が落ちるような感嘆を覚える。 我々は未来に向かう実時間の世界に生きているから物体が瞬時に消滅してしまうなど想像だにできないが、もし過去に向かう虚時間の世界を同時に眺めることができたならば実時間の世界で発生した物体が虚時間の世界では次々に消滅していくことを目撃するにちがいないのである。
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