未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
時間も空間もない宇宙構造
時間も空間もない宇宙構造は以下の2つの根拠から導かれる。
(1)線形時間の廃棄
時間が流れないとする根拠は 「
時は流れず
」 に詳しいがその中核にあるのは 「線形時間の廃棄」 である。 時間が 「過去→現在→未来」 と連続する(流れる)という時間概念は線形時間と呼ばれる。 私がこの線形時間を排する最大の理由は均質な時間が不連続で異質な 「記憶としての過去(意識世界)」→「実在としての現在(物質世界)」→「想像としての未来(意識世界)」 を貫いて連続する(流れる)とする論拠を相当な妥当性をもって納得することができないからに他ならない。
現在は運動をともなった物質で構成された実在世界(実の世界)であって、意識で構成された仮想世界(虚の世界)とは本質的に異なっている。 均質な時間が異質な 「虚の世界」 と 「実の世界」 を貫いて流れていることなど如何なる妥当性をもって理解したらよいのであろうか?
考え得る妥当性は過去を 「過去の実在」 と考え、現在を 「今の今の実在」 と考え、未来を 「未来の実在」 と考え、かくなる実在を貫いて時間が流れているとする考えである。 だが現在の実在はともかく過去の実在や未来の実在はいったいどこに存在するのか?
考え得る妥当性は 「現在に含まれている」 とする空間構造である。 換言すれば、幾つかの過去の実在と幾つかの未来の実在が 「現在に重なっている」 とする空間構造である。
(2)フラクタル幾何学概念
重なった空間構造が空間を失ってしまう根拠はフランスの数学者ブノワ・マンデルブロが提示した 「フラクタル」 と呼ばれる幾何学概念から導かれる。 フラクタルとは空間のサイズを拡大していっても縮小していっても同じ構造が現れるという構造法則である。 それはまさに 「入れ子人形」 のような構造であって、私はその構造法則を 「細部は全体 全体は細部」 と表現している。 フラクタル構造概念は空間構造が空間を失ってしまう論拠として相当の妥当性をもって納得することができる概念である。
また 「時間も空間もない宇宙構造」 は、理論物理学者デビット・ボームが論じた 「暗在系と明在系で構成された宇宙構造」 に相似する。 ボームはその宇宙構造を以下のように語っている。
物質宇宙とは、同時系列で重層している時空間が瞬間、瞬間に我々が認識できる形で現実世界に象出することで実在場が構築され、この瞬間が連続することで、我々に時間という概念を発生させ、時系列で連続している時空間を認識の中に構成させることで存在している世界かもしれない。
時間と空間の消失は即ち 「時空の消失」 である。 では時空が消失した宇宙構造を何と表現したらいいのだろう。 思考はやがて 「宇宙とは仕組みである」 という構造概念に行き着く。 以上の思考展開から 「時間も空間もない宇宙構造」 を集約すれば以下の2項に還元される。
宇宙には 時間がなく さまざまな過去や未来が重層的に重なった 現在だけ がある
宇宙には 空間がなく さまざまな現在が重層的に重なった 仕組みだけ がある
2021.12.21
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