赤穂滞在中に書いた自伝 「配所残筆」 の中で、自らの歴史家としての成熟と開眼について 「耳を信じて目を信ぜず、近きを棄てて遠きを取り候事、是非に及ばず、誠に学者の痛病に候
(耳で聞くことを信じて目で見ることを信じないこと、また身近かなことを軽視し遠くのことを重視するのは学者達の是非なき痛病である)」
と語っている。 目を信ぜよとは、眼前に見える事物を信ぜよという意味ではなく、「心の眼」 を持てということである。 また近きを棄てて遠きを取り候事とは学者達が古典の訓詁注釈ばかりを重視しているのは学者の是非なき患いであって、本当に歴史というものを知りたいのであれば、それらの
「古い言葉」 に頼ってはならないというのである。
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