Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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Let It Be〜あるがままに
 宗教家、道元禅師。 落語家、柳家小三治。 彼らがたどり着いた世界は作為を捨てることで拓かれた 「自らの宇宙」 であり、その宇宙で 「あるがままに生きる」 ことであった。 その世界を英語で表現すれば 「Let It Be」 である。 それはまたビートルズ往年の名曲 「レット・イット・ビー」 が描いた世界でもある。
"Let It Be"
レット・イット・ビー

When I find myself in times of trouble, Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom, let it be
And in my hour of darkness she is standing right in front of me
Speaking words of wisdom, let it be
Let it be, let it be, let it be, let it be
Whisper words of wisdom, let it be

ずっと悩んで苦しみ抜いたときに 僕のもとに女神がやってきたんだ
そしてこんな言葉を呟いた 素直に生きなさい
すべてが暗闇に包まれたとき 彼女は僕のすぐそばに立っていた
そしてこう呟いたんだ 素直に生きればいいと
自分らしく 素直に生きればいい
そんな素敵な言葉が聞こえたんだ 素直なままにって

And when the broken hearted people living in the world agree
There will be an answer, let it be
For though they may be parted, there is still a chance that they will see
There will be an answer, let it be
Let it be, let it be, let it be, let it be
Yeah, There will be an answer, let it be
Let it be, let it be, let it be, let it be
Whisper words of wisdom, let it be

心が打ちのめされてしまっても 自分の認められる世界の中にいるかぎり
答えは見つかる だからそのまま突き進め
離ればなれになってしまっても 再び出会うチャンスはまだ残されている
答えはきっと見つかるよ そのまま突き進め
自分らしく 素直に生きればいい
そう 答えは見つかるから 迷うことなんてないんだ
自分らしく 素直に生きればいい
そんな素敵な言葉を聞いたんだ 迷わず突き進めって

And when the night is cloudy there is still a light that shines on me
Shine until tomorrow, let it be
I wake up to the sound of music, Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom, let it be
Let it be, let it be, let it be, yeah, let it be
Oh, There will be an answer, let it be
Let it be, let it be, let it be, yeah, let it be
Whisper words of wisdom, let it be

夜の空がどんよりと曇ってしまっても 僕らを照らす明かりはまだあって
明日が来るまで照らし出してくれるから 大丈夫
目が覚めると音楽が聞こえて 女神がやってきて こう言うんだ
あなたの思うように 生きればいいんだって
素直なままで 思うようにいけばいい
答えはきっと見つかるから
素直なままで 思うようにいけばいい
そんな素敵な言葉を聞いたんだ 迷わず突き進めって
 名曲 「レット・イット・ビー」 が描いた世界は道元や小三治らが作為を捨てることで拓かれた 「あるがままの世界」 と同じ世界である。 2番の歌詞、「心が打ちのめされてしまっても 自分の認められる世界の中にいるかぎり 答えは見つかる」 というくだりの中の 「自分の認められる世界」 とは即ち 「自らの宇宙」 のことである。 しいて両者のスタンスの違いを指摘すれば、ビートルズの 「あるがままに」 は彼らのもとにやって来た 「女神の示唆」 であることに対して、道元や小三治の 「あるがままに」 は自ら作為を捨てることで拓かれた 「頓悟」 であることである。 前者は他力本願的な悟りであり、後者は自力本願的な悟りである。 それはまた西洋人と東洋人の感覚の違いによるものかもしれない。 だが 「自らの宇宙に あるがままに生きる」 という本質的なスタンスには何ら変わりがない。

2021.10.22


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