以下は蛇足であるが、かって若かりし日、山行に魅せられていた季節があった。 それは単独行で挑んだ厳冬期の冬山でのことであった。
時ならぬ吹雪に遭遇して数日間に渡って雪洞でのビバークを余儀なくされたのである。 身の危険を感じたビバークの中で、私の山への姿勢がそれまでの
「自然への挑戦」 から 「自然への同化」 へと素直に転じていったのである。 それは山と自分が一心同体になった感覚とでも言ったらいいであろうか?
恐怖心は去り、何日でもビバークできるような気持ちになった。 雪山で冬眠する熊の気持ちが理解できたのである。 その後、天候は回復し無事に下山が叶ったのであるが、もしその時に閉塞した状況に打ち勝とうとしていたら、結果は大きく変わっていたのかもしれない。
その後の私の山行が 「自然体」 になったのは言うまでもない。
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