Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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破滅からの脱出
 「バベルの塔〜破滅への階段」 では現代社会に迫っている破滅への危機について書いたが、その破滅には外的な物質的世界の破滅と内的な意識的世界の破滅の2つの破滅がある。 2つの破滅は同時にリンクして進行する。 物質的世界の破滅は、即ち意識的世界の破滅なのである。 「服装の乱れは心の乱れ」 という訳である。
 現代社会は外的な物質的世界も内的な意識的世界もともに千々に乱れに乱れて終局の破滅に向かっているように観える。 それは物質的な環境悪化に起因する破滅(自然災害等)と意識的な環境悪化に起因する破滅(医療崩壊等)が同時進行するさまに如実に現れている。 つまり、「身の外も内もボロボロ」 という訳である。
 ではいかにしたらかくなる破滅から脱することができるのであろうか? 外的な物質的環境を改めることは大工事であって容易ではない。 むしろ内的な意識的環境を改めることが先であろう。 まずはその破滅の基となっている傲慢かつ敵対的な姿勢を改め、謙虚かつ友好的な姿勢に代えることである。 虚心坦懐、自然の声に耳を傾け、宇宙の心に添うことである。 その姿勢については 第1556回 「宇宙を纏う」 でも描いている。 曰く。 自然に宇宙に 「同化する」 ことである。
 以下は蛇足であるが、かって若かりし日、山行に魅せられていた季節があった。 それは単独行で挑んだ厳冬期の冬山でのことであった。 時ならぬ吹雪に遭遇して数日間に渡って雪洞でのビバークを余儀なくされたのである。 身の危険を感じたビバークの中で、私の山への姿勢がそれまでの 「自然への挑戦」 から 「自然への同化」 へと素直に転じていったのである。 それは山と自分が一心同体になった感覚とでも言ったらいいであろうか? 恐怖心は去り、何日でもビバークできるような気持ちになった。 雪山で冬眠する熊の気持ちが理解できたのである。 その後、天候は回復し無事に下山が叶ったのであるが、もしその時に閉塞した状況に打ち勝とうとしていたら、結果は大きく変わっていたのかもしれない。 その後の私の山行が 「自然体」 になったのは言うまでもない。

2021.09.24


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