個人の幸福を社会の望ましいあり方に結びつける方法として、英国のジェレミ・ベンサム(1748〜1832年)が18
世紀末に定式化した 「最大多数の最大幸福」 がある。 その基本にあるのは、個々人の幸福を量として把握するという考え方である。
ある社会の 「幸福の総量」 はその構成員一人一人の幸福量をすべて加算することによって得られる。 望ましい社会とは、この 「幸福の総量」
を最大化するような社会だということになる。 現代社会で語られている幸福とは多くこの 「量としての幸福」 である。 だが、幸福は均質なモノではなく、量に還元することのできない経験である。
それは人によって異なり、同じ一人の人にあっても、時と場合によって異なる。 そうした異質な経験を一律に数え上げ、「幸福の総量」
を算出するという発想はあまりに直截に過ぎる。
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