Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

存在の儚さ
 さまざまな意識で構築されている情報社会は、さまざまな物質で構築されていたそれ以前の社会とは本質的に異なっている。 それ以前の社会とは人類が経験してきた狩猟採集社会であり、農耕社会であり、工業社会である。 本質的に異なるとは物質から意識への社会構造の変化である。 換言すれば有形資産から無形資産への転換である。
 現代産業の本質はこの変化と転換を抜きにしてはとらえることができない。 意識を主体とした無形資産は 「在ると言えば在る」 し 「無いと言えば無い」 ようなものである。 多くはコンピュータの中にデジタルデータとして存在しているものであって、クリックひとつで瞬時に消滅してしまう。 それに対して物質を主体にした有形資産は 「在る」 ものである。 多くは現実世界の中にアナログデータとして存在しているものであって、石斧や爆薬を使わない限り消滅しない。
 現代人に感じる 「存在の儚さ」 はあるいは依って立つこれらの資産の違いからくるものなのかもしれない。 営々と築いてきた資産が指先ひとつで 「あっという間」 に消えてしまうようではおちおち夜も眠れないではないか。 それに対して原始人に感じる 「堂々たる存在感」 はいかばかりか、もって瞑すべきである。

2021.06.16


copyright © Squarenet