空海は自らの入定(入滅)に先だち 「私は兜率天へのぼり 弥勒菩薩の御前に参るであろう そして56億7000万年後
私は必ず弥勒菩薩とともに下生する」 と弟子たちに遺告した。 弥勒菩薩とは、釈迦の弟子で、死後、天上の兜率天に生まれ、釈迦の滅後、56億7000万年後に再び人間世界に下生し、出家修道して悟りを開き、竜華樹の下で三度の説法を行い、釈迦滅後の人々を救うといわれている菩薩である。
空海は若き日より兜率天の弥勒菩薩のもとへ行くことが生涯の目標であった。
太陽系が形成されたのは46億年前であるとされる。 この年数と空海が遺告した下生するまでの56億7000万年の年数の一致は何を語っているのであろう?
弥勒菩薩がいる兜率天がどこにあるのかわからないが、宇宙論における時間とは距離でもある。 宇宙の彼方にある銀河までの距離は光年という1年間に光が進む距離を単位にして計測される。
宇宙の膨張速度は光速を上回ると言われているが、仮に宇宙が光の速度で膨張しているとするならば、46億年前に形成された太陽系の位置は、今や46億光年隔たっていることになる。
あるいは空海が遺告した下生する56億7000万年後という時の経過は、世も末となった地球に弥勒菩薩と空海の意識が帰り着くまでの56億7000万光年という
「道のり」 なのかもしれない。
さらに、地球や大気や人の体はほとんどが 「重元素」 でつくられている。 軽元素はビックバン初期の宇宙で形成されたものであるのに対し、重元素は銀河における超新星爆発などで形成されたものである。
天文学者マーティン・リースは 「我々は星くず(ずっと昔に死んだ星の灰)である」 と述べている。 そうであれば、宇宙空間に漂っている星くずである人間が56億7000万年後に甦ったからといって驚くにはあたらない。
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