長明が生きたのは今を遡る800年程も前のことである。 晩年の長明は京の郊外に位置する日野山(京都市伏見区日野)に一丈四方(方丈)の庵をむすび隠棲、その小庵で当時の世相を観察して書き記した。
表題の 「方丈記」 とは自らが名づけたものである。 無常観の文学とも、また乱世をいかに生きるかという人生論ともされる。 方丈記が書かれた時代は、安元3年(1177年)の都の火災、治承4年(1180年)の都で発生した竜巻、その直後の福原京遷都、養和年間(1181年〜1182年)の飢饉、元暦2年(1185年)に都を襲った大地震等々と災害が頻発した時代であった。
方丈記に流れる無常観とはこれらに帰因してのものであろう。
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